敵が取り持つ恋

東京ドームで行われた巨人VS阪神の最終戦を見に言った時のことだった。
ジャイアンツの優勝がかかったこの一戦、強烈な打撃戦になり、一瞬たりとも気が抜けない状況が続いた。
結果は、16対12と言う、何か野球のスコアーとは思えないような数字で、ジャイアンツが6人のピッチャーをつぎ込み、なんとか逃げ切った。
この結果、ヤクルトとの三連戦で二勝すれば優勝と言うところまで、やっと来たのだった。
俺は友人たちと三人で観戦に来ていた。
俺たちは、帰りに近くの居酒屋で祝杯を挙げることにして、ドームをあとにした。

ドームを出て、丸ノ内線の駅近くにある“源”と言う居酒屋に俺たちは入った。
なんとか席を確保してもらい、早速生ビールで乾杯をした。ビールを焼酎に替えて頼んだ摘まみを盛大に喰いながら、俺たちは今日の試合の話しで盛り上がった。自然に声もでかくなってくるし、それにつれて態度もでかくなっていた。おまけにタイガースの事を言いたい放題に言い始めたから、堪らなかった。
「ちょっと、いくらドームの近くにだって阪神ファンもいるのよ。おまけに東京人にだって、阪神ファンはいるってこと忘れてない。だまって聞いてりゃ、言いたい放題じゃないの。何さまのつもりよ、あんたたち」と、俺たちのテーブルの横に立ちはだかった、綺麗な、本当に綺麗なお姉さまがおっしゃった。
俺たち三人は呆気にとられ、なにかを言いかえすタイミングを失っていた。

しかし、謝るつもりはさらさらない俺は「あなたの言うことはよく判るが、ここが関西だったら俺たちもここまでは言わない。しかし、ここはドームのお膝元。ジャイアンツファンの特権として、こんな話も出来るだろう。さっきも言ったけれど、ここが関西だったらこんな話はしないし、阪神ファンが今の俺たちのような話をしていても、じっと堪えるだけだ。だって、そんな話をする特権が阪神ファンにはあるからだよ」と、俺は落ちついて、ゆっくりとした口調で言った。
「そうね、そうよね。特権かぁ~、そのとおりよね。御免なさい、ちょっと、なんだか不完全燃焼のカスが・・・・・。本当にごめんなさい」と彼女は、急にしおらしくなった。
気がついたら、彼女はどうやら一人で来ているようだ。
「そんなに気にすることはないよ。俺たちももうこの話は止める。良かったら一緒に飲まないか」と誘ってみた。
「え!なんでかしら、阪神ファンの私を入れてくれるって、なんで、いま、私は喧嘩を売ったのに」と彼女は訝っていた。
「気にしなくてもいいんじゃない、勝つこともあれば負けることもある。その全てを受け入れて応援するのが、本当のファンだ。それが貴方には見えるからって言うわけ」

あれから半年、俺とあの時の彼女“真苗”さんは、彼と彼女になっている。
今でも、俺はジャイアンツファンで真苗さんは阪神ファンのまま。
でも、お互いの関係は、お互いの熱烈なファン。
いつまでもお互いファンでいようと、口には出さないが、俺たちは心の中で思っている。
敵が取り持つ恋ってわけかな?

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